
これで普通に美味しいさば寿司は完成した。
使用している原材料やこだわりに関して言えば、近辺のさば寿司に負けないと自負していたが、やはり普通のさば寿司でしかなかった。インパクトがない。
「桜100選にも選ばれている鶴山公園の満開の桜」をイメージして作るさば寿司。
他にはない商品としてはこれしかなかった。
テーマは桜色と香りであった。
シャリに色を付けるのは、細工寿司では行うことであるが、一般的な商品に色付けしたシャリを使うのは、寿司の世界から言ったら邪道であった。母親も含めて、寿司職人の人達は反対意見が多かった。「桜をイメージして作り、他との差別化を行うためには、色と香りは絶対に必要だと」皆を説得し、何とか理解してもらった。
反対意見はあったものの、桜色のシャリを試作してみた。最初は着色料である色粉を使いシャリを炊いてみたが色が桜ではなく赤色のシャリとなった。また合成着色料は体にも良くないため使いたくなかった。
母の知人の和菓子屋さんが桜色のお饅頭を作っており、話を聞いてみると紅麹というものをつかっているらしい。近くの製菓材料屋に行ってみると、紅麹は売っていた。これは、中国では漢方薬として親しまれており、日本でも栄養補助食品として売られている。これを使って着色すれば安全面では間違いないと感じた。
色の付け方の研究のため、1升づつ3通りの方法を行い、綺麗な桜色になる微妙な使用料を導き出した。耳かき1杯の微妙な世界である。
次に桜の香りである。一般的に人工香料として桜の香りエキスが売られていた。炊いてみたが、香りが主張しすぎて、さばや昆布の旨みが損なわれる。また食べた後も口の中に香りが残ってしまう。これでは駄目だ。
桜の葉の塩漬けを刻んで一緒にご飯を炊いてみたが、葉っぱが口に残り食べにくかったが、香りは自然で良かった。
3回目の試作として、だしパックの袋に桜の葉の塩漬けを入れ香りだけをシャリにつけようとしたが、桜の葉に近い部分は香りがきつく、そうでない場所には香りがついてなかった。
香りづけには1か月ほどかかり、里内さんが思いついたのは「桜の葉の塩漬けを使い、自分でエキスを作ってしまえば良いんではないか?」ということであった。これは企業秘密なので、エキス製造方法は出せないが、5回程の試作の結果、桜の葉エキスが完成した。
色・香りの面での差別化のための試作が2ヶ月ほどかかり完成したのは10月のことであった。同時並行して、パッケージとネーミングの検討を行った。
パッケージは昔ながらの竹の皮を使い、さば寿司全体を包むということで決まったが、ネーミングには苦労した。単に「さば寿司」というネーミングではインパクトがない。何か商品名として考えたかった。
ネーミングとして上がったのが、「桜の華」「さくら」と桜を前面に出したものや、「二代目」「元気」など全くさば寿司とはかけ離れた商品名をつけるという案も出た。
3回ほどの会議で30個ほどの案が出たが、最終的に決まったのは「うまかろう」である。
これは、さばを英語で「マッカロウ」と言い、津山では食べ物を他の人に薦める時「このさば寿司、美味しいでしょう!」と伝える時「このさば寿司、うまかろう(語尾を上げる)」と言うことから、英語で「マッカロウ」と他の人に薦めたくなるさば寿司という意味合いをかけて、「うまかろう」という商品名が決まった。
2002年1月に、原材料、仕込み方法、色と香りの差別化、パッケージ、ネーミングが決まった。
「よし!これで勝負するぞ!」皆でこのさば寿司を全国展開するぞという意気込みが盛り上がった。
このさば寿司を商品化するにあたって、前述の「エシレバター」の販売経験が大きく影響したことは言うまでもない。